温度変調DSCによる比熱測定 | Linseis Japan
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温度変調DSCによる比熱測定


比熱容量 (Cp)

比熱とも呼ばれる比熱容量 (Cp) は、物質の熱物理特性の一つです。 これは、物質が熱エネルギーを蓄える能力を示し、1gあたりの物質の温度を温度を 1 K上昇させるために必要な熱量のことです。一般的に比熱測定では、測定中に相転移 (融解等) がない範囲で測定します。

比熱容量の SI 単位は、 [kJ/kg*K)] です。

比熱容量には、定圧 (一定圧力での Cp) と定容 (一定体積での Cv) があります。 一定の体積では、与えられた熱量は温度上昇のために使用されます。 圧力が一定の場合、体積変化に必要な熱は一部だけです。 これは、ガスや蒸気を測定する際に考慮する必要があります。

Cp 値が大きいと、一定量の熱で温度がわずかしか上昇しません。逆に、値が小さい場合、同じ熱量でも温度上昇が大きくなる可能性があります。 下記に一般的な物質の比熱を示します。

 

物質 アルミニウム ガラス チョコレート セメント 水(20 °C) PET (結晶性, 20°C)
Cp  [J/g*K] 0,896 0,6 ~ 0,8 3,140 0,754 4,187 1,510

Table 1: 一般的な物質の比熱 (Chemie.de)

Cp は重要な材料特性として、仕様やデータシートに記載されます。 エンタルピーやエントロピーなどの熱力学的量を計算するために使用されたり、さまざまな業界での材料とその用途の評価にも役立ちます。

DSCを使用した比熱測定方法

熱力学的変数として、Cp を測定する 1 つの方法として、示差走査熱量測定 (DSC) があります。DSCで比熱を測定する際は、サンプルとリファレンスは、ある調節さえた温度プログラムの同一条件下で測定します。 サンプルとリファレンスの間に流入する熱流束の差を温度の関数とし て測定することで、任意温度での試料の比熱 容量を求める方法です。

さまざまな測定方法が利用可能です。 直接法では、Cp は熱流を昇温速度とサンプル質量で除算して直接計算できます。 プロセスは迅速ですが、あまり正確ではありません。 そのため、DIN 51007 および ASTM E 1269 規格に沿って、より正確なサファイアをリファレンスとして使用する方法が一般的に使用されるようになりました。

サファイアを使用した比熱測定方法

この方法は比較方式で、同じ条件で 3 回の測定を行います。

  1. 2つの空パンを使用してブランク測定をします。
  2. サンプル側に重量と比熱容量が既知のサファイア(α-aluminum oxide)をセットして、リファレンス側は空パンをセットして測定します。
  3. 最後に測定したいサンプルをサンプル側にセットして同じ条件で測定します。

サンプルの比熱容量曲線は、次の式に従って 3 つの測定曲線を使用して、温度の関数として決定できます。

 

 

Formel für Cp

 

Where:

Cp,p: specific heat capacity of the sample

Cp,sap: specific heat capacity of the sapphire reference

θp: heat flow of the sample

θ0: heat flow of the blank curve

θsap: heat flow of the sapphire reference

msap: mass of the sapphire reference

mp: mass of the sample

 

Cp測定時の誤差の考慮事項

Cp を計算するときは、3 つの測定すべてに同じ試料容器が使用されていることをベストです。 これが不可能な場合は、試料容器の質量と Cp を知る必要があります。 誤差を考慮する場合、これらの不確実性を考慮する必要があります。

また、温度が上昇すると測定感度が低下することにも注意してください。 サンプルの測定されたヒートフロー(DSC 信号) にも誤差が生じます。 これは、センサーとサンプル間の熱抵抗が原因であり、常に真のヒートフローよりも小さくなります。

速すぎるの昇温速度、大きな質量や熱容量の違い、サンプル、試料容器及びセンサー間の接触の悪さはすべて、特に測定結果に影響を与える可能性があります。 さらに、同じヒートフローが得られるように、リファレンスの熱伝導率と比熱容量がサンプルの領域内にあることを確認する必要があります。

 

温度変調 DSC

従来の DSC 測定では、発熱反応と吸熱反応が同時に発生すると、DSC 信号にオーバーラップが発生し、正確なチャートが得られません。 これを改善することができるのが、重なった反応を分離することができる温度変調 DSC です。

昇温速度は、正弦波状温度変調がリニア昇温に重ね合わされます。この手順は、ASTM E2716 09 に対応しています。

この温度変調測定の利点は、高温(600℃)でも最大 1 % の比熱精度を得るできます。 通常のDSCでは測定中に化学反応、結晶化、蒸発などの反応が起きた場合測定できないが、MDSCであれば測定することが可能です。 また、専用の評価ソフトウェアが必要です。

試料容器材料の影響

DSC測定では試料容器とサンプルが合金化等の反応したりしないものを選択してください。また温度範囲に合わせて材料を選択してください。もちろん蓋の有り無しもデータに影響があります。